長時間デスクワークをされる人の多くが腰痛や肩こりに悩まされる。
そこで、座っている時の姿勢とか、長時間デスクワークに効果的なストレッチとかいろいろノウハウを探す中で、このスタンディングデスクを利用してみるという情報に接することも十分あるかと思います。
スタンディングデスクを知り、実際に試してみる。この従来の生活習慣を劇的に変えるという高いハードルをせっかく越えたのに、その後続かずにやめたという方がいるのはなぜなのか?
まさに私の場合がそうでした。
その理由を思い起こすと、期待した効果が実感できなかったのと、今までしていた生活習慣を変えることは、過去の自分を否定しかねない行為だと誤解してしまい、この種の自己否定を回避するために、以前の慣れ親しんだ習慣に戻りたいと考える潜在的な欲求に負けてしまい、正確な判断ができなかったからだと思います。
それだけ、社会的な習慣を変えるという行為は替えようとするのは困難だし、仮に変えてみても、すぐに舞い戻ってしまいがちです。まずは以前の私がそうだったように多くの方が今でも座って作業することが楽だと感じる理由がなんなのかを考えるとわかりやすいと思います。
具体的には
(電車で出入り口付近に立つ人は、角に背を向ける向きで背中をよりかけて立つ)・物心ついたころから我々は子供のころから椅子に座って授業を受ける習慣を長く経験しており、そういう社会習慣から座るのは当たり前、座る方が楽だと思うから。
(小学校で罰で「立たされる」のは立つことがつらいという前提があるから)・朝礼や運動会などのイベントにおける開会式など、身なりを正して人の話を聞くときに、起立して聞くという経験を子供のころからしていることから、立っていることはつらいとか疲れるという刷り込みがされやすい。
(講習で、講師の人が「失礼して座らせていただきます」というのは座った方が楽だと思うから)・学校に限らず、通勤通学の際の電車やバスにはお年寄りや貧富さん、身体障がい者の方には優先席を譲るマナーが普通に普及している。あるいは、席が埋まっている状態で座っている自分の周囲に座れないそういった方がいる際には席を譲るのが好ましいと教えられていることで、立っているよりも座っている方がくつろげる社会習慣が定着している。
次に、これらの理由が本当に正しいのかについて私の考えを記します。
■寝る時に横になるのと同様に、椅子に体を持たれかけるのも立つより楽
実は睡眠についてはほとんど科学的なエビデンスはないといわれています。
こういったことを話すと、「いや、確か大勢の被験者の実験で7時間睡眠が一番長生きできるという研究結果が合ったはずだ」という方もいらっしゃるかと思います。
たしかに、アメリカのカリフォルニア大学とガン協会が110万人もの人を対象に睡眠時間と寿命の関係を調査した研究が有名です。
ところが、この時の被験者は入院患者でした。
つまり、普通に健康で日常生活を送っている人ではありません。
さらに、寿命が短くなるといった研究は、それ以外のあらゆる要素を同じにして得られた結果でないと、本当の意味ではエビデンスとして信用に足るものかどうかは疑わしいと思います。
この手の研究は、睡眠時間が4時間で寿命が70歳だったら今度は7時間で試してみようというやり直しもできません。
ことのことから寿命にどのくらい影響があるかは厳密には調べることには限界があるのではと思います。
また、そもそも睡眠で疲れが取れるというのも科学的に証明はされていないといわれます。(日本ショートスリーパー育成協会代表 掘大輔氏)眠気と疲れは同じにとらえられやすいのですが、眠気は体内に睡眠物質が蓄積されるなどさまざまな理由により起こる現象で、筋肉疲労の疲れとは異なるものです。
わかりやすい事例として、プロのスポーツ選手が試合と試合の休憩時間に身体を横にしたりマッサージを施してもらうことはあっても、仮眠をとることは一般的ではありません。肉体的な疲労は睡眠をとらなくても横になれば取れるからです。
休日に昼まで寝ていて起きた時にだるさを感じた経験がある方は多いですが、睡眠が疲労を回復するならこういった体感は睡眠が疲労を癒すなら矛盾します。
逆に長時間デスクワークをしたことによる疲れはむしろ体を動かすことで取れます。
このことから、睡眠は疲れをいやす=睡眠中は体を横にする=椅子に座って作業することは立って行うよりも疲れない、とは言えません。
■義務教育のころから習慣化され体に刷り込まれている授業を受ける時は座るという習慣や、社会人が椅子に座って仕事をするデスワークは本当に楽な姿勢なのか?
私は医者でもトレーニング指導の専門家でもありません。それでも立つことが座ることよりも疲れるということの証明は難しいと考える例をいくつか挙げることは可能です。
まず、電車で座席に座ったままの状態を長時間続けることは非常に困難です。その証拠に数分毎に足を組み替えたり、身体の向きや左右の重心を変えるなどして「姿勢を変え続けている」のは経験上知っています。これは、座ったままの姿勢を維持するのが疲れるからだと思います。
また、デスクワークで椅子に座って机で仕事や勉強をする場合、どうしても姿勢は前かがみになります。頭をまっすぐにした状態で手元の資料を読んだりボールペンで文章を書いたりメモしたりするにはどうしても頭や体を前に前傾させるからです。
頭はざっくり体重の1割の重さです。仮に体重が60キロの方なら頭部の重さは6キロもあります。そんな重さが斜めになれば、その重さがそのまま肩や腰に負荷となってのしかかります。
したがって、椅子に座っての作業は疲れます。
また、椅子に座った状態の両足というのは思いのほか不安定です。座っている椅子が、自分の体とりわけ足の高さに適していることはまれで、重心のバランスをとるのが難しいのです。つまり理想的な椅子ではないことをカバーするために、余計な負荷が筋肉に緊張感とストレスとなり、足を組み替えたり左右に揺らしたり、身体の向きを変えたりしてしまいます。本来座った姿勢が疲れないなら、その状態を保つのが自然です。
逆にまっすく背筋を伸ばした状態で立つと、頭部は背骨の上から体に乗る形でバランスよく体重がかかるのっで座る姿勢より疲れにくいと考えるのが自然でしょう。
もちろん両足も上半身が上からバランスよく体重がかかるのでぶらぶらせず安定するため疲れにくいのです。
疲れるか疲れないかという目線だと比較しずらいと考える時は、重心の安定感という視点で座るのと立つのとで比較して考えてみるとよりわかりやすいかと思います。
実際、40歳を過ぎてオリンピックでメダルを獲得されているスキージャンプの葛西紀明選手も自身の書籍で「背筋がまっすぐにピンと伸びている」姿勢は、じつは最も疲れないラクな姿勢」であって、「楽な姿勢」が必ずしも「疲れない姿勢」ではないと書いています。
まとめ
慣れ親しんだ生活習慣ほど変えるのは難しい理由
・身体がその方法になれている
・新しい方法にすぐ身体が順応はできない
・長い生活習慣ほど変えることは自己否定を連想させやすい
慣れ親しんだ生活習慣を持続するうえでのハードル
・まずやってみるフットワークの軽さを持つ
・期待した効果はすぐにはわからない(今までの習慣が長いほど体が順応するまでに時間がかかる)
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